銀座のトリル 03-3572-8228

2月 2017

店内にて

母が分厚くて重い昔のアルバムを何冊も本箱に並べていたので、軽いフォトブックを買って来て娘と整理をしました。

母の症状は緩やかに進行していき、いつか全ての記憶はなくなるのかもしれません。

それでも家族やお友達の写真が直ぐに見られる場所にあれば、少しでも進行を遅らせる事が出来るかもという娘心からでした。

新しいアルバムを母に手渡し反応をみたら、その日の母は写っている殆どの人に見覚えがなさそうでした。

アルバム効果か、その翌日から母は私の顔を見る度に神戸の弟を自宅に招待したいと言い始めました。

「ベッドは1つしかないけど姉弟だから床にお布団敷いてゴロ寝で良いんだから。 もう長いこと弟に会ってないから会って話がしたいわ。来るように言ってくれない?」「わかった。でもまだ寒いからもう少し暖かくなってきたら来てもらおうね。」

母は首を縦に振ってくれませんでした。

何度も何度も顔を合わせる度に同じ事を言うので、これはもう私が連れて行くしかないのかなと思い始めていました。そんなところに神戸で日帰りの仕事があるから連れて行こうかと嬉しい親戚からの申し出が。

助かった!笑

母に言うとその事ばかり言い始め質問責めに合ってこちらの頭が壊れるので、出発当日まで内緒にする事にしました。

トイレの心配は全くないこと、最近は私の家に来て10分位で迷惑になるから帰るねって帰り支度を始めること、そんな母を引き止めて座らせて数十回も繰り返している事を私は叔父に説明しました。

「叔父ちゃんにも同じ事をすると思うの。迷惑をかけてしまう、それが物凄く心配だわ。」

叔父は大笑いして、「お姉ちゃん、やるやんか。心配せんといて。俺ら姉弟なんやから。」

良かったね、お母さん。

やっと会えるよ。

私・店内にて

「ママも趣味があれば良いのにね。」と娘が言う。

お仕事と母の事と家事で一杯いっぱいの私を娘は傍でしっかり見ていてくれる。

子育てが一段落した頃見つけた趣味は、家事を放棄するほど熱中し過ぎて断念した。何か始めると他の物が見えなくなってしまう私は、今は趣味は見つけちゃういけないと思ってる。

週末のお昼過ぎ、食料を買い込み母の家を訪ねた。母はパジャマ姿で嬉しそうに出迎えてくれた。今か今かと待っていてくれたようだった。母にパンを食べさせておいて、クローゼットの整理をした。

前日浴室に干しておいた母の靴下が洗濯用ハンガーのままブラウスの間に吊ってあった。その隣には下着とバスタオル。

整理した?笑

趣味なんて何もなくても良い。

そんな事、今の私にはどうでもいい。

明日もまた整理しよう。

趣味はお婆ちゃんで良い。

マスター・店内にて

日が長くなってきました。春一番も吹きました。暖かい春はもう目の前ですね。皆様いかがお過ごしですか。

何年か前までトリルは私と娘だけでした。娘には本職があるのでトリルに来られない日もあり、私だけいう夜も度々ありました。いくら夜のお仕事が長い私でも、深夜に初めてお会いする方がいらっしゃるとドキドキが止まりませんでした。お話の最中にいきなり立ち上がられた時があって、押し倒されるのかと身構えたくらいです。

そんな事もマスターが来てくれるようになってからすっかりなくなっていました。マスターは武道の有段者だと私に言いました。僕は怒ったら物凄く怖いんだって、そんなことも言いました。マスターという職業は優しいだけでは務まりません。私はマスターの言葉を聞いて、安心して初対面のお客様に接客出来るようになりました。

ところがマスターは、そんな事で?というような事で直ぐにお腹を壊します。おトイレ目掛けて一目散に飛んで行きます。日比谷公園からの帰りに帝国ホテルのおトイレに飛んで行った事もあります。スーパーでお買い物中にも遠くまで飛んで行き、先日は並木通りから三越まで飛んで行きました。 私はマスターが飛んで行くのを何十回も見ました。

「ちょっと離れます。」と言う時は飛んで行く時です。あっという間に姿が見えなくなります。

幻滅です。笑